English

武石 直樹

キーワード

流体力学; 計算バイオメカニクス; 微小循環; レオロジー;

赤血球; 白血球; 血小板 腫瘍循環細胞 (CTC); カプセル;

margination; 細胞接着; 血栓; ドラッグ・デリバリー;

脳循環; 酸素輸送; がん転移; GPGPU


~ 微小循環系バイオメカニクスに関する研究 ~

血液中を流動する細胞の接着は、マルチ・ステップな現象(血管壁面への移動、接触・回転、安定した接着)として知られ、白血球の免疫応答やがん転移のような生理的あるいは病理的過程において重要である。この問題は、接着タンパクの生化学反応だけでなく、細胞および細胞環境の力学が関係する複雑な現象と言える。細胞接着の包括的な理解を目指し、血漿・細胞質の流体力学、細胞膜の固体力学、接着タンパクのリガンド‐レセプタ結合を連立することで細胞流動と細胞接着の計算力学モデルを開発し、それを用いた数値解析を行う。


赤血球懸濁液のレオロジー

血液の粘性は大血管のみならず微小血管系の血流動態を把握する重要な指標である。ヒトの血液は55%の血漿成分と45%の血球成分により構成されている。血球成分の内およそ98%以上が赤血球から構成されることから、血液は赤血球濃厚懸濁液といえる。数値解析によって、どのようにして個々の赤血球の挙動がマクロな血液の特性(レオロジー特性)を作り出すのかを明らかにする。このような数値解析を通じて、糖尿病患者などの血液動態を正確に把握する知見を収集する。

(詳細 :Takeishi et al., 2019, J. Fluid Mech.)

Suspension of RBCs under a shear flow at 41% hematocirt.


白血球のmargination

一般に、変形能を有する粒子は管路内で管軸上を流れる軸集中という現象を示す。血管内を流動する赤血球も軸集中を示すが、白血球は逆に赤血球との流体力学的な相互作用によって管壁近傍へと押し出させる(margination)。白血球が血管壁と接着を成立させる距離に達するための力学的条件とは何か?高速計算技術(GPGPU)によって、血球細胞同士の流体力学的な相互作用の詳細を解析する。

(詳細 :Takeishi et al., 2014, Physiol Rep.)

The flow of a leukocyte and RBCs in a microvessel. The flow direction is from left to right.


腫瘍循環細胞の流動

がん関連死のうち、その死因の大多数は転移とされている。血流を介したがんの転移では、腫瘍部から遊離したがん細胞が血液中を流れ、次の転移場所へ向かう(血行性転移)。本研究では特に、血液中を流れるがん細胞(腫瘍循環細胞)の流動に注目し、血管径や腫瘍循環細胞のサイズの違によって血球流動がどのように変化するのかを解析する。この知見から、がん細胞分離デバイスの最適設計に関する指針が得られないかを検討する。

(詳細 :Takeishi et al., 2015, Phys Rev E. and also in: Inside Science, "Fast, Fluid Cells Spread Cancer")

The flow of a CTC and RBCs in a microvessel.


マイクロ粒子の流動

血管径が血球サイズと同程度な毛細血管では、赤血球の流れのモードはmulti-file flowからbolus flowへと遷移する。この時、血球間には局所的な循環流が形成されるため、薬剤のような微小粒子の挙動は、この流れの影響を受けることが予想される。毛細血管を含む微小血管内でのマイクロ粒子の流動を解析し、薬剤輸送における粒子の最適なサイズとは何かについて検討する。

(詳細 :Takeishi & Imai, 2017, Sci Rep.)

Microparticles are captured by the bolus flow of the RBCs in the capillary, while they marginate in relatively lager microvessels. Lines show particle trajectories.


毛細血管内での細胞接着

原子間力顕微鏡を用いた実験で取得した接着タンパクの力学特性の知見を基に、分子レベルの計算力学モデルを構築し、ボトムアップ的に細胞レベルの計算力学モデルを構築する。このモデルを用いることによって、接着タンパクの密度といった分子レベルのパラメータと細胞レベルの接着現象の関係を詳細に解析する。

(詳細 :Takeishi et al., 2016, Am J Physiol Heart & Circ Physiol.)

Microparticles are captured by the bolus flow of the RBCs in the capillary (top), while they marginate in relatively lager microvessels (bottom). Lines show particle trajectories.